かつてASEAN共同工業プロジェクト、AIPという経済協力施策がありました。ASEAN諸国の間で交わされた経済協力施策で、各国が共同出資した新規大規模プロジェクトでした。特恵貿易地域(特定の国の製品を優遇する貿易ブロックで、関税でも税率が下げられる)による尿素肥料やディーゼルエンジンなどの8つのプロジェクトが行われ、日本もこれに10億ドルの援助をしています。
しかし実際に実現したのはインドネシアとマレーシアの尿素肥料プロジェクトのみであり、結局は各国の利害対立となってしまい、失敗してしまったプロジェクトでした。
今回のFTAAPで懸念されているのは、まさにこのような失敗でしょう。しかも今回はAIPとは比較にならないほどの経済規模です。確実に混沌は生じ、これによる国家間の争いも発生するでしょう。国家間だけではありません。各国内での産業も大きく混乱しますので、どのような結果を生むのかは全くの未知数と言えます。その未知数のなかで、AIPが辿ったような失敗もありえることを十分に承知しておかなくてはならないのです。