FTAAPの現状は今、アメリカ、中国、日本の三国間で揺れている状況といえるかもしれません。まず前提として、アメリカが推しているのがTPP、中国が推しているのがFTAAP、ということを頭に入れてください。簡単に言うと、日本はアメリカと中国という二つの大国の間に板挟み状態なのです。
ただこの板挟み状態というのも、裏を返すと「日本の動き方次第で天秤が傾く」という状況ともいえるでしょう。これはいったい、どういうことなのでしょうか?
日本は現実的に、もはやTPPにもFTAAPにも参加しないという選択肢が絶たれているような状況です。20年も昔に首脳会議で同意していたアジアの経済貿易自由化について、話が現実味を帯びてきたのですから。
しかし、ただ黙って自由化に参加していたのでは得られるメリットはわずかなものとなってしまいます。それどころか農業など産業の空洞化ともなりかねません。そこで日本が現在TPP交渉でアメリカに突きつけている条件が、農産物5項目の関税取扱いについての留保です。これに対しアメリカは自動車部品の関税撤廃について留保を主張しています。
ここで重要となるのがFTAAPの存在でしょう。日本は基本的にアメリカを敵に回せませんので、けん制するしかありません。そこで「TPP以外の選択肢もある」ということを暗に示すため、FTAAPという協定の存在を持ち出している状況なのです。かといって中国主体の経済圏の構築もあまり理想的ではありませんよね。アメリカもこれは同じです。「TPPを実現したのちに、FTAAPの実現を目指す。」という安倍さんの発言は、もしかすると両国を敵にすることなくけん制する絶妙な発言だったのかもしれません。